院長先生のコラム

なぜ糖尿病の治療が必要なのか?

なぜ糖尿病の治療が必要なのでしょうか。意外に答えの難しい質問かもしれません。では質問を変えてみます。なぜ骨折の治療が必要なのでしょうか。できるだけ骨折前と変わりない生活ができるようにするためです。なぜ急性虫垂炎(俗にいう盲腸のこと)の治療が必要なのでしょうか。急性虫垂炎を放っておくと生命に関わることもあるからです。それでは糖尿病の場合はどうでしょうか。糖尿病治療ガイドは次のように書いています。

健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、健康な人と変わらない寿命の確保

簡単に言うと、「健康な人と同じくらい元気で長生きしましょう」ということです。逆に考えると、糖尿病は日常生活の質を下げたり、寿命を短くしたりする可能性があるということになります。詳しくは合併症の項に譲りますが、糖尿病を放っておくと、失明(目が見えなくなること)や腎不全、下肢(足)の切断のリスク(危険性)が高くなります。また心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高くなります。失明、下肢の切断、脳梗塞は生活の質を低下させることになります。腎不全や心筋梗塞は生命に関わることがあります。そして全くインスリンが分泌されない状態ではヒトはブドウ糖をエネルギーにすることができないので、それ自体が生命に関わる問題になります。合併症(時には糖尿病そのもの)によって日常生活の質を下げたり、寿命を短くしたりすることなく、元気で長生きすることが糖尿病の治療の目標になるのです。

しかし、これほど難しい目標もありません。というのも、目標を達成できたと実感することが難しいからです。喜寿や米寿などの節目で長生きを実感する機会はあるかもしれませんが、元気であることを実感するのはなかなか難しいようです。断水してはじめて水のありがたさが分かるように、不健康な状態になってはじめて健康であることのありがたさが実感できるのではないでしょうか。このように元気で長生きというのは難しい目標なのですが、未来のことを想像することが大事なのだと思います。

ところで、元気で長生きのためには血糖値の状態が良ければそれでいいのでしょうか。一部の合併症は主に血糖値の状態に影響されますが、特に動脈硬化に関する合併症(心筋梗塞や脳梗塞)は他の多くの原因も関係します。血圧、脂質(コレステロールや中性脂肪)、喫煙などがそうです。どれだけ血糖値の状態が良かったとしても、血圧が高いと動脈硬化を防ぐことはできません。喫煙も同様です。タバコを吸いながら糖尿病や高血圧の治療を行うのは、ザルで水をすくうようなものです。

糖尿病治療の目標

健康な人と同じくらい元気で長生きすることだが、実感するのは難しい。合併症の予防のためには、糖尿病だけでなく、血圧、脂質の治療や禁煙も重要である。

■コラム 糖尿病患者の死因

この項では「糖尿病の合併症を防ぎ、元気で長生きしましょう」と書きましたが、実際に糖尿病の患者さんはどんな原因で亡くなるのでしょうか。表 は日本人糖尿病患者と日本人一般の死因をまとめたものです。糖尿病患者の死因の26.8%が血管障害、日本人一般の死因の22.7%が血管障害ということを示しています。この血管障害とは糖尿病の合併症のことです。実は糖尿病患者でも血管障害による死亡はそんなに多くありません。これは治療(糖尿病、高血圧など)の賜物だと思います。悪性新生物とは悪性腫瘍(癌)のことです。こちらの方が血管障害の割合を上回っています。つまり糖尿病患者でも癌で亡くなることの方が多いということになります。糖尿病患者さんは「合併症に気をつけましょう」とよく言われていることと思いますが、実はそれだけでは不十分なのです。合併症と同じくらい癌にも注意しなければ長生きはできないのです。

表1 日本人糖尿病患者と日本人一般の死因の比較(1991~2000年)

糖尿病患者と死因の比較表

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