院長先生のコラム

低血糖

次は低血糖ですが、これほど誤解されている病態はありません

糖尿病の患者さんが入院すると、頻繁に血糖測定をします。測定すると意外に低い血糖値になることがあります。空腹時(朝の食事前)に70mg/dl程度になることもあります。これが低血糖と誤解されてしまうのです。なぜでしょうか。普段は70mg/dlのような「素晴らしく良い」血糖値を見ることがないからです。糖尿病だから血糖値を測定し、高血圧だから血圧を測定しています。測定する人は(患者さんだけでなく医療関係者も)高い数字に見慣れてしまっているのです。

少し脱線しますが、よく「血圧が低すぎるのではないか」という人がいます。そんな人は健康そのものだったりしますが、100/64mmHgのような血圧を心配しています。同世代の仲間は血圧を下げる薬を内服しても130/80mmHgだったりするので、「自分は血圧が低すぎる」と心配するのです。本当は100/64mmHgは「素晴らしく良い」血圧なのですが、高血圧に見慣れてしまうと「低すぎる」という心配の原因になるようです。これで脱線は終わりです。

血糖値にも同じことがいえます。高血糖に見慣れてしまうと、70mg/dlがとんでもなく低い値に見えてしまうのです。ところが70mg/dlでも低血糖のことがあります。インスリンの自己注射をしたのですが、思ったより食欲がなく普段の半分も食べなかったような状況を考えてみましょう。冷や汗が止まらず、手も振えています。これは明らかに低血糖です。この違いはどこにあるのでしょうか。

低血糖かどうかは次の3つの要素で決まります。①原因となる薬剤、②血糖値、③低血糖症状の3つです原因となる薬剤は必須の要素です(注:ここでは糖尿病治療中の低血糖のみ考えます。糖尿病の治療以外でも低血糖になることはありますが、ここでは割愛します)。具体的にはインスリンや膵臓を刺激してインスリンを分泌させる内服薬です。インスリンは低血糖の原因となりますが、インスリンの中でも低血糖を起こしやすいものと起こしにくいものがあります。早く効くタイプのインスリンは低血糖の原因になりやすく、ゆっくり効くタイプのインスリンは低血糖の原因になりにくいようです。内服薬は逆の傾向があり、長時間膵臓を刺激するタイプの内服薬の方が低血糖の原因になりやすいようです。低血糖かどうかを判断するためには、どんなインスリンや内服薬を用いているかの情報が必要になるのです。

次は血糖値ですが、実は血糖値について明言するのは難しいところがあります。先程の例のように血糖値だけでは決まらないからです。ただし50mg/dl未満の血糖値は問答無用で低血糖と考えてもいいと思います。

最後に低血糖症状です。まずは症状を挙げてみます。空腹感、冷や汗、手の振え、動悸(脈がはやくなること)、意識障害などが有名ですが、経験したことのある患者さんの話を聞くと他にもいろいろな症状があるようです。意識障害というと無反応になることを思い浮かべる方も多いと思いますが、意識障害は無反応とは限りません。何となくおかしな様子は意識障害になります。会話が噛み合わなかったり、普段はしないような行動をとったりします。これらも全て意識障害です。

低血糖かどうかはこれらの組み合わせで決まります。全て揃えばもちろん低血糖ですが、原因(薬剤)と低血糖症状でも低血糖と考えます。逆に低血糖症状がなくても、原因(薬剤)と50mg/dl未満の低血糖があれば低血糖です。原因(薬剤)がなくても、低血糖症状と50mg/dl未満の低血糖があれば低血糖になりますが、この低血糖は一番厄介な低血糖です。薬剤が原因ではなく、他の原因があるからです(ここでは詳細は割愛します)。

これで急性合併症は終わりです。

 

低血糖

①原因となる薬剤(インスリンや膵臓を刺激してインスリンを分泌させる薬剤)

②血糖値

③低血糖症状(空腹感、冷や汗、手の振え、動悸、意識障害など)

①+②+③ ⇒低血糖

①+② ⇒50mg/dl未満なら低血糖、それ以上の場合は低血糖でない可能性も

①+③ ⇒低血糖(血糖値は関係ない)

②+③ ⇒低血糖だが、原因を突き止めることが重要

② ⇒50mg/dl未満なら低血糖だが、ほとんど見ることはない

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